2008年の大統領選では、民主党の予備選でオバマ氏とヒラリー・クリントン現国務長官が終盤まで接戦を続け、その盛り上がりが同党の政権奪還につながった。そこで共和党本部は同じ展開を目指した。予備選序盤の多くの州で、獲得できる代議員を「勝者総取り」から「得票数による比例配分」に改めて接戦を演出。また予備選が集中するスーパーチューズデーの日程も1カ月ほど遅らせた。予備選を長期化させて、メディアの気を引き、ブームを巻き起こす狙いだった。
長期化には成功した。だが、各陣営が相手の弱点を突くネガティブキャンペーンが続き、消耗戦になってきた。
— 「『オバマの影』に焦るロムニー」, 日経ビジネス, 2012.3.19.
民主党やオバマ大統領の支持者が、共和党の予備選に参加する。奇妙に思える行動だが、オハイオ州の共和党予備選では制度上、可能だ。それを利用して民主党支持者たちが「撹乱戦」を展開した。「サントラムが共和党候補になれば本戦が楽に戦える」「それが無理でも予備選を接戦にしてロムニーを疲弊させよう」。そんな狙いからだ。
— 「『オバマの影』に焦るロムニー」, 日経ビジネス, 2012.3.19.
こうした「内向き志向」のアメリカという現象ですが、ブッシュの二つの戦争(アフガン・イラク)の反動であると同時に、オバマを大統領に押し上げた「ジェネレーションY」が持っている反戦的なカルチャーの反映、そして冒頭申し上げたような財政の苦しさ、ヨーロッパの経済危機から距離を置きたい心理など、色々な要素が絡まっているように思います。このトレンドは相当に長く続くことも考えられます。
従って、北朝鮮情勢に関してアメリカの取るスタンスは、(1)核拡散抑止の観点から後退は許さない、(2)民主化とか韓国による統一などは無理して欲張らない、(3)中国に責任をもった「仕切り」をさせる対応で構わない、(4)但し関係国の協調には目配りをする、というのが基本となり、その線を大きく逸脱することはないでしょう。悪く言えば、リーダーシップは取らないということになると思います。
アメリカは「世界の警察官」から降り、「自由と民主主義の十字軍」的な役割からも降りようとしています。その一方で世界情勢は複雑化が進んでいます。より多くのプレーヤーが、よりグローバルな市場と政治状況の中で、それぞれの利害を追求する時代になって来ています。アメリカにリーダーないし悪役を求める事ができない以上、各国の外交や経済政策の舵取りには、独立した観点からの大局観をそれぞれが持つことが求められる、そう考えるべきだと思うのです。
— [JMM667Sa]「多難な国際情勢下、それでも内向きなアメリカ」from911/USAレポート, 2011.12.24
金正日死亡のニュースが入ってきたのは、丁度この問題[=給与天引き税の減税措置の延長について]が最高潮になっていた時だったのです。結果的にこのまま合意ができずに1月を迎えてしまい、「本当に給与の手取りがダウン」してしまうようだと、有権者のショックは大きいわけですが、そんな中、上院超党派案と下院共和党の間は「政治的クリンチ」になってしまっていました。結果的に、本当に決裂して給与の手取りが減ると、その責めは全部が下院共和党に行くということになり、下院共和党は妥協に動いています。
妥協が成立したのが22日で、23日には法案が成立してオバマ大統領が署名し、一件落着となりました。結果的に今回は共和党は大きなイメージダウンを喰らい、オバマ政権は得点を稼いだ格好です。この問題、多くのアメリカ人の給与の手取りが影響を受ける一方で、将来的な年金や財政の問題にも関わってくるわけで、その点では重要な政策論争になるのは分かります。ですが、そのために北朝鮮の指導者死亡というニュースが軽視されるというのは、やはり現在のアメリカの世相の中に「内向き」という心理が強いということが挙げられると思うのです。
例えば、イラクの戦争に関してはこの12月で、米軍はほぼ完全に撤退しました。民間の軍事サービス会社の要員が5000名程度、そして文民の政府アドバイザーやCIA関係者など1000人強は残るのですが、正規の米軍兵力はゼロになったのです。その撤兵が完了したのを見透かすように、今週はバグダッドを中心に連続爆破事件があり、少なくとも70名以上が犠牲になっています。
ですが、アメリカのメディアの反応は淡々と事実を伝えるだけです。例えば、NBCではイラク戦争の最初から最後までを現地や周辺で見届けたリチャード・アングル記者が、米軍の撤兵式典を中継した後に米国に戻ったところで、この連続爆破事件の報道に際してコメントしていました。「爆弾攻撃は米軍撤兵後の空白を狙ったものです。恐らく旧バース党の残党などスンニー派の仕業でしょう。こうなることは予想されていました。アメリカはサダムを除去する代わりにシーア派を重用する形でイラクの新体制を安定させようとしました。ただ、米軍が不在となるとスンニー派は復権してゆくでしょう」
アングル記者はサラリと述べただけですが、よく聞けば2003年のブッシュのイラク侵攻以来のプロセスの全てが間違っていたと言っているわけです。そんなアングル記者の厳しいコメントも、そのまま放映され、それに何の反響もない、それほどにイラクは遠くなっているとも言えます。
— [JMM667Sa]「多難な国際情勢下、それでも内向きなアメリカ」from911/USAレポート, 2011.12.24