shungo.arai

A scrapbook on my concern.
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これからの日本では、付加価値の高い産業は国内に残し、他の単純な労働は海外に移転していかざるを得ないでしょう。その意味で、「日本」という国を一つのまとまりで考えること自体も意味がなくなってきているのかもしれません。

たとえば、米国と一言でいってもそこに均一な経済圏があるわけではなく、「米国・ウォールストリート州」や「米国・シリコンバレー州」といったものが、都市国家のような形で存在すると考えたほうが理解しやすい。米国にも発展途上で、メキシコとあまり変わらない地域だってあります。グローバル経済が進展してくると、「国家」という単位が従来ほど重要な意味を持たなくなってくる。「国家」の境界が越えられるだけではなく、一国家のまとまりも揺らいでいくのです。

同様に、日本も従来のような「日本国」単位では元気がなくなってきているけれども、「日本国・東京州」というレベルでは、経済、文化、人口集積度やインフラの充実度といったさまざまな視点から見て、依然として非常に魅力的な都市国家であり続けるでしょう。そういう意味で、私は東京という都市に関して悲観的な思いは抱いてはいません。

一方、地方はどうすればいいのか? まずは「第二の東京」を目指すというスタイルはやめること。東京に追いつこうとするよりも、むしろアジアの他の都市をライバルにする――つまりゲームのルール自体を変えてしまうほうがいい。たとえば関西圏では、大阪で橋下市長が改革を進めていますが、いまから東京に勝とうとしたところで難しい。だから関西のライバルは上海や香港だと、発想を切り替えていくほうが賢明です。

— 瀧本哲史「『これからのキャリア』をどうデザインすべきか?」, Courrier Japon, Vol.090.
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春の労使交渉は今年も定期昇給(定昇)の実施など目先の賃金をどうするかが争点になり、賃金制度そのものの改革の議論は深まらないまま一段落した。

年功制の見直しなど賃金制度改革を加速しないと企業の国際競争力は低下する。企業の収益力が落ちれば賃金や雇用が減る心配がある。労使は当座の賃金をどう決めるかだけでなく、企業の成長を促す賃金制度づくりを急ぐ時だ。

トヨタ自動車、ホンダ、パナソニックなど自動車や電機の労組は今年、世界経済の先行きが不透明なため3年連続で賃上げ要求を見送り、勤続年数に応じて賃金が上がる定昇の確保を最優先にした。

大半は定昇を守れたが、実質的な賃金引き下げを阻止できたにすぎない。年間一時金の会社側回答も前年実績割れが相次いだ。

かつて賃上げ相場づくりを主導した力は、自動車や電機の労組にない。有力業種が賃上げをけん引する春闘方式は完全に崩壊している。春に集中して賃金交渉をすることで様々な業種に賃上げを波及させる春闘は、経済が右肩上がりで伸びた時代のものだ。

労組は春闘によらずに賃金を上げる道を考える必要がある。社員の意欲を高め、人材を採りやすい賃金制度にして企業の競争力を高めることが賃金増につながる。

重要なのは定昇などの年功賃金の改革だ。今も日本企業の賃金は勤続30年ごろまで伸び続けている。役割や成果に応じた処遇に改める余地は大きい。専門性のある人材や外国人の採用を増やすうえでも年功制の見直しは不可欠だ。

労組は定昇制度の維持を強く主張するが、勤続年数が上がるごとに技能が身につき、生産性が高まりやすい若手の段階などを除き、年功制が合理的でない点を直視すべきだ。経営側も春の交渉の時期に定昇制度の見直しを言い出すのでなく、年間を通して賃金改革を議論する姿勢を示す必要がある。

人口減による労働力不足への対策として、高齢者や女性を活用する工夫も欠かせない。定年後の再雇用では、生産性が高い人は処遇を引き上げれば再雇用者の士気が向上する。人件費の配分を見直してパートの賃金を引き上げれば、子育てにひと区切りがついた女性を戦力にしやすくなる。

労使が議論しなければならないことは山積している。目先の賃金ばかり議論していては経営環境の変化から取り残されるだけだ。

— 「社説:『春闘』と決別し賃金改革の議論を深めよ」, 日本経済新聞(朝刊), 2012年3月18日.
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――では私たちはいま何をすべきでしょうか。

「まず大胆な税制改革だ。欧米に比べれば格段に低率な日本の消費税率を適正な水準まで引き上げれば、政府が抱える膨大な債務は解消する。税制改革を通じ、女性や外国人労働者が力を発揮するよう労働市場の変革を促すこともできる。日本社会は女性の能力を生かしきれていない。人口減少と高齢化を補い、優秀な人材を海外から日本に呼び込むには労働市場の開放も有効だ」

「もうひとつはアジアと北米、オセアニアの接点としての日本の地政学的な優位を最大限活用することだ。米国の覇権は近く終わり、アジア太平洋が世界貿易の中心となる。海外から日本に人が集まる仕組みをつくり、金融市場や港湾などのインフラ整備に成功すれば、東京は世界の中心都市となり得る」

――しかし東アジアでは外交的緊張が続いています。

「日本が主体的に動き、東アジアを平和で安定した地域に変えることが国益につながる。日本は第2次世界大戦までの過去を清算できず、日中関係はぎくしゃくしたままだ。いまのままでは日本の若者も自国に誇りを持てないだろう。日本は周辺国と戦略的な同盟関係を結ぶべきだ。長年いがみ合ってきた仏独が和解したように、日中が新たな関係を築くことは双方の利益になる」

「そのうえで日本の首相は東アジア・東南アジアに欧州連合(EU)のような共通市場を提案してほしい。関税を廃し、最終的には共通通貨を導入すればよい。日本が世界で覇権を握ることにつながるだろう」

――日本の政治の力量が問われます。

「確かに日本の政治には長期的な戦略を実現するだけの力がない。終戦後、米国は日本の暴走を抑えようと政府の力をあえて弱めた。英仏もドイツに対し同様の処置をした。その結果としていまの日本の統治システムは議会の力が極めて強い。不安定な政治は構造的な問題を抱えている」

— 「アジア共通市場へ動け 経済学者・思想家 ジャック・アタリ氏」, 日本経済新聞(朝刊), 2012年3月11日.