Filed under:
DPRK Newsweek
10年の韓国海軍哨戒艦撃沈と延坪島への砲撃を、金正日はなぜやめさせなかったのか。答えはおそらく、「軍の決定に異を唱えるほどの政治的権力がなかったから」だ。
当時の金正日にとって、より重要なのは体制維持のため、自らが指名した後継者に対する軍の支持を取り付けることだった。自分と同じく軍務経験がないまま「最高司令官」の座に就く息子は、軍にしてみれば指導者としての正統性に欠ける。韓国に対する人民軍の挑発攻撃を大目に見たのは、軍のご機嫌を取り、次の指導者への指示を獲得するためのものだったのだろう。
これが正しい答えかどうかは分からない。だが11年に、北朝鮮の関係者にこの答えを語った際、公の場でそんな話はするなと警告された。金正日は「最高権力者」ではない、と言うに等しいからだ。つまり、裏を返せば、私[=ケネス・キノシス 元米国務省北朝鮮分析官]の読みは当たっているということになる。
そのとおりなら、新たな「最高司令官」金正恩の下で北朝鮮がどうなるかも分かる。政治経験も人生経験も少ない若き指導者は、父親にも増して軍部に頼らざるを得ないはずだ。
— 「金正恩が頼り切る軍の支配」, ニューズウィーク日本版, 2012.1.4-11, p.32.
Filed under:
DPRK Newsweek
深刻な懸念材料もある。90年代の大飢饉で十分な栄養を取れないまま成長した子供たちが、労働人口世代に達しているのだ。環日本海経済研究所の三村[光弘調査研究部部長]は「今後、労働力の低下が顕在化する恐れがある」と言う。
— 「北朝鮮経済、2つの顔」, ニューズウィーク日本版, 2012.1.4-11, p.27.
Filed under:
DPRK Newsweek
そもそも金正日政権がなぜ経済成長を維持できたかを理解するためには、まず北朝鮮を取り巻くいくつかの思い込みを捨てなければならない。
まず、北朝鮮が少しずつではあるがインフラの整備に取り組んでいる点だ。特に最近では中国と協力して国境の羅先や鴨緑江上の2つの島を経済特区として共同開発している。またロシアとの間でも石油パイプラインや送電線、鉄道連結事業などの協力事業も進めている。
ソ連崩壊で後ろ盾を失って以降停滞していた重工業の近代化がようやく動き始めており、鉄鋼業、鉱業、軽工業を原動力に復興期から成長期へと移行しつつあると見ることもできる。
北朝鮮が国際的に孤立しているというのも誤解だ。実際には160を超す国と外交・通商関係を結んでおり、EU加盟国の大半とも国交がある。
日本との貿易は06年の日本側の経済制裁以来中断しているが、北朝鮮と世界の結びつきは年々強まっている。大韓貿易投資振興公社の統計によると、韓国との南北貿易を除く10年の北朝鮮の貿易総額は42億ドルあまりで、90年以降最高だった。
最大の貿易相手国は中国で、北朝鮮の貿易総額の83%を占めている。北朝鮮は主に石炭や鉄鋼、レアメタル(希少金属)を輸出し、百二原油や工業製品を輸入している。10年3月の韓国海軍の哨戒艦の沈没事件以来、北朝鮮と韓国の間の南北貿易は中断しており、結果として北朝鮮の中国への貿易依存度はますます高まっている。
なかでも鉱物資源は北朝鮮にとって外貨を稼ぐ貴重な収入源だ。11年1~9月に北朝鮮が中国に輸出した鉱物資源は8億5000万ドルで、前年の同時期に比べて金額ベースで3.5倍に増えている。イランやシリア、パキスタンにミサイルを売って年間約1億ドルの収入を得ているという事実もある。
— 「北朝鮮経済、2つの顔」, ニューズウィーク日本版, 2012.1.4-11, p.27.
Filed under:
DPRK Newsweek
本当に懸念すべきなのは、軍部がいまだかつてなく強大な権力を握っていること。金正恩が父親のように強硬派の軍部と穏健派の外務官僚たちをうまくコントロールして戦略的な決定を下すことができるとは限らない。
— 「それでも北朝鮮は崩壊しない」, ニューズウィーク日本版, 2012.1.4-11, p.24.
Filed under:
DPRK Newsweek
「金正日の急死で権力の空白が生まれる」と欧米や日韓が右往左往しているのも、この権力構造[=金正日個人が絶対的な権力を握る専制政治というよりも、軍部と権力を共有した独裁体制]が十分に認識されていないからだ。権力の空白が生まれる可能性は低い――金正日は権力の頂点に立った象徴だったが、実際には軍部こそが支配権力であり、その軍部は既に不動の地位を確立している。
— 「『金正日』という名の虚像」, ニューズウィーク日本版, 2012.1.4-11, p.21.