全国約3900万人の有権者の5分の1以上を抱える大票田のソウル市で、野党が擁立した無所属候補の朴元淳にハンナラ党の女性候補が大敗したのは、李明博政権下の4年間で韓国の有権者の意識が地殻変動を起こしていたためだ。その地殻変動とは、李明博が推進してきた経済政策に対する若年層の反発だ。
財閥系企業である現代建設の会長から政界へと転身した李明博は、07年の前回大統領選で成長戦略を公約に掲げて当選。年率7%の成長と1人当たり4万ドルの所得を達成し、韓国を世界第7位の経済圏にするという「韓国747」計画をぶち上げた。「CEO大統領」という愛称で呼ばれ、その経営手腕に国民は期待を寄せた。
その政策が実を結ばなかったわけではない。自由貿易協定(FTA)の推進や、大統領自らが外国にインフラ事業を売り込む経済外交など、目に見える成果も挙げ、10年の韓国の経済は実質GDP成長率6.2%と依然として高い水準を維持している。
だが大企業が業績を伸ばした一方で、国民の生活は逼迫していった。労働者の所得が国の所得全体に占める割合、労働所得分配率は10年、過去6年で最低の59.2%に後退。国全体の所得が伸びた半面、労働者の収入は増えず格差が拡大している。
深刻な社会問題はもう1つある。若者の就職難だ。90年代以降、韓国では企業が人件費が安くて済む非正規雇用を増やし、新卒の学生など若者の採用を減らす傾向が続いている。その一方で10代の大学進学率は09年には82%と過去20年で急上昇。高学歴の新卒学生が希望する大企業の採用枠が不足し、結果として多くの若者が無職になった。
09年の25~29歳の男性の失業率は数字上では9.0%だが、これに就職に備えて大学院や専門予備校に通っている若者を加えた「事実上の失業率」は20%を超えるとみられている。