そもそも金正日政権がなぜ経済成長を維持できたかを理解するためには、まず北朝鮮を取り巻くいくつかの思い込みを捨てなければならない。
まず、北朝鮮が少しずつではあるがインフラの整備に取り組んでいる点だ。特に最近では中国と協力して国境の羅先や鴨緑江上の2つの島を経済特区として共同開発している。またロシアとの間でも石油パイプラインや送電線、鉄道連結事業などの協力事業も進めている。
ソ連崩壊で後ろ盾を失って以降停滞していた重工業の近代化がようやく動き始めており、鉄鋼業、鉱業、軽工業を原動力に復興期から成長期へと移行しつつあると見ることもできる。
北朝鮮が国際的に孤立しているというのも誤解だ。実際には160を超す国と外交・通商関係を結んでおり、EU加盟国の大半とも国交がある。
日本との貿易は06年の日本側の経済制裁以来中断しているが、北朝鮮と世界の結びつきは年々強まっている。大韓貿易投資振興公社の統計によると、韓国との南北貿易を除く10年の北朝鮮の貿易総額は42億ドルあまりで、90年以降最高だった。
最大の貿易相手国は中国で、北朝鮮の貿易総額の83%を占めている。北朝鮮は主に石炭や鉄鋼、レアメタル(希少金属)を輸出し、百二原油や工業製品を輸入している。10年3月の韓国海軍の哨戒艦の沈没事件以来、北朝鮮と韓国の間の南北貿易は中断しており、結果として北朝鮮の中国への貿易依存度はますます高まっている。
なかでも鉱物資源は北朝鮮にとって外貨を稼ぐ貴重な収入源だ。11年1~9月に北朝鮮が中国に輸出した鉱物資源は8億5000万ドルで、前年の同時期に比べて金額ベースで3.5倍に増えている。イランやシリア、パキスタンにミサイルを売って年間約1億ドルの収入を得ているという事実もある。
— 「北朝鮮経済、2つの顔」, ニューズウィーク日本版, 2012.1.4-11, p.27.