金正日死亡のニュースが入ってきたのは、丁度この問題[=給与天引き税の減税措置の延長について]が最高潮になっていた時だったのです。結果的にこのまま合意ができずに1月を迎えてしまい、「本当に給与の手取りがダウン」してしまうようだと、有権者のショックは大きいわけですが、そんな中、上院超党派案と下院共和党の間は「政治的クリンチ」になってしまっていました。結果的に、本当に決裂して給与の手取りが減ると、その責めは全部が下院共和党に行くということになり、下院共和党は妥協に動いています。
妥協が成立したのが22日で、23日には法案が成立してオバマ大統領が署名し、一件落着となりました。結果的に今回は共和党は大きなイメージダウンを喰らい、オバマ政権は得点を稼いだ格好です。この問題、多くのアメリカ人の給与の手取りが影響を受ける一方で、将来的な年金や財政の問題にも関わってくるわけで、その点では重要な政策論争になるのは分かります。ですが、そのために北朝鮮の指導者死亡というニュースが軽視されるというのは、やはり現在のアメリカの世相の中に「内向き」という心理が強いということが挙げられると思うのです。
例えば、イラクの戦争に関してはこの12月で、米軍はほぼ完全に撤退しました。民間の軍事サービス会社の要員が5000名程度、そして文民の政府アドバイザーやCIA関係者など1000人強は残るのですが、正規の米軍兵力はゼロになったのです。その撤兵が完了したのを見透かすように、今週はバグダッドを中心に連続爆破事件があり、少なくとも70名以上が犠牲になっています。
ですが、アメリカのメディアの反応は淡々と事実を伝えるだけです。例えば、NBCではイラク戦争の最初から最後までを現地や周辺で見届けたリチャード・アングル記者が、米軍の撤兵式典を中継した後に米国に戻ったところで、この連続爆破事件の報道に際してコメントしていました。「爆弾攻撃は米軍撤兵後の空白を狙ったものです。恐らく旧バース党の残党などスンニー派の仕業でしょう。こうなることは予想されていました。アメリカはサダムを除去する代わりにシーア派を重用する形でイラクの新体制を安定させようとしました。ただ、米軍が不在となるとスンニー派は復権してゆくでしょう」
アングル記者はサラリと述べただけですが、よく聞けば2003年のブッシュのイラク侵攻以来のプロセスの全てが間違っていたと言っているわけです。そんなアングル記者の厳しいコメントも、そのまま放映され、それに何の反響もない、それほどにイラクは遠くなっているとも言えます。