shungo.arai

A marketer working for an social gaming company in Tokyo.
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――東日本大震災では自動車産業も大きな被害を受けました。

「震災の爪痕は大きかったが、回復も早かった。あれほどの被害にもかかわらず、日産の場合は9月末には再びフル生産できるまでになった。今回の復興を見て、なぜ日本が世界3位の経済大国なのか、私個人も納得できた気がする。人々は規律を守り、コミュニティー(共同体)のために献身的に努力する。お世辞ではなく、日本のパワーを世界に示したと思う」

――タイの洪水で再び生産が混乱しました。

「自動車のサプライチェーン(供給網)について、修正すべき点がいくつか明らかになった。代替の効かない重要部品は、調達先を複数化する必要がある。さらに、自動車会社と直接取引のない企業でも半導体のようなカギとなる部品をつくっているところがあり、そうした企業の状況を把握しないといけない」

――12年はどんな年になるでしょう。

「欧州が最大のリスク要因であることは間違いないが、他の地域は意外に明るいのではないか。欧州が世界に悪影響を与えるというよりも、そこだけがマイナスで他から取り残されるというイメージだ。実は今年の世界の新車販売は約7500万台に達し、過去最高を塗り替えそうだ。12年もやはり200万~300万台増えると予測している。日本や米国は一定のカーブで回復し、新興国市場も伸びる。一言でいえば『モデレート・グロース(そこそこの成長)』の年になると思う」

――円高による日本メーカーの競争力低下が心配されますが。

「今の円高は異常だと何度も言ってきた。日本政府は自国の競争力を守るために、意志と行動力を見せてほしい。スイスは政府が『これ以上の通貨高は容認しない』と表明することで、結果を出している。同じことがなぜ日本にできないのか」

「今世界で起きているのは、戦略産業の呼び込み競争だ。日産はバッテリーの量産を始める米英で、政府から低利融資などサポートを受けた。中国も自動車産業の育成に焦点を当てている。日本政府も自動車関連税を一部軽減するなど、いいニュースが出てきた。補助が欲しくて言うのではない。政府が企業誘致の国際競争に鈍感なままだと、一国の産業基盤が傷ついてしまう」

――世界的な競争のなかで、焦点はやはり新興市場でしょうか。

 「日産は中国では日系メーカーとして首位に立った。新しい市場は投入車種も工場も販売網も白紙から絵を描くことができ、その巧拙が結果に直結する。中国で成功したからといって、ベトナムでうまくいくとは限らない。世界中の企業にとって『ニューゲーム』が始まったのだと思う」

――ゲームに勝つには何が必要でしょう。

「現場力や品質管理などに強みがある日本企業に必要なのは人材や考え方のダイバーシティ(多様性)だ。新市場を現地のパートナーと協力しながら開拓する。相手から学び、こちらも教える。成功体験に固執するのは良くない。日産のトップ100人のうち、日本人はおよそ60人で、残りは私をはじめ世界各地の出身者だ。組織のなかに多様性を定着させることが、日本企業や日本社会の課題ではないか」

— 「2012 視点(1)カルロス・ゴーン日産社長 新たなゲームの幕開け」, 日本経済新聞(朝刊), 2011年12月23日.